未来を予測するシンクタンクのリサーチャーコラム

グローバル・インテリジェンス・ユニットのリサーチャーのコラム。国内外で重要と思われるトピックをテキストまたは動画でお届けします。

花の「冷蔵庫」―止まらないフラワー・ロスを救え!

あと1週間ほどでやってくるバレンタイン。

昨年(2020年)で10年目を迎えた取り組みとして、農林水産省が後押しする「フラワー・バレンタイン」があるのをご存知だろうか。

(図表:クラッチブーケ)

(出典:Wikipedia

切り花の月別支出額は卒業式、クリスマス並びに盆や彼岸といった「イヴェント」のある月に比べ、1月~2月の冬季、6月~7月の夏季には支出が落ち込む傾向にある。

(図表:一世帯あたりの切り花の月別支出状況(平成21年))

(出典:総務省「家計調査年報」

こうした中で切り花の需要拡大のため「フラワー・バレンタイン」が徐々に定着しつつある。

実は生花産業は世界的に大きな社会問題を抱えている。

それは「フード・ロス」の3倍もの量を出している「フラワー・ロス」である(参考)。

生花業界はそもそもプロダクト・アウト型の構造である。つまり生産者が作った分だけ農協や市場が買い取り、卸業者及び小売業者を通して消費者へと届く。

こうした流通過程の中で「規格ロス」(農協や市場の規格に合わず出荷できない)、「マージンロス」(多段階の流通過程を経ることでマージンが膨らむ)、「鮮度ロス」(いつ来るか分からない注文に対して小売業者が在庫を多く準備)といった多段階のロスが発生する。特に「鮮度ロス」は出荷数の3割にも上るという(参考)。

こうした様々な「ロス」の損失は当然売価に上乗せされるため需要減につながることとなる。

加えて昨年(2020年)以来、卒業式や入学式、ハロウィン、クリスマスなど様々なイヴェントが「自粛」され更に花の需要は低迷している。「コロナ禍」はフラワー・ロスを更に増加させている。

コロナ禍で注目が集まったのが花のサブスクリプション・サービスである。

日比谷花壇BOTANICはじめ多くのサブスクリプション・サービスが存在し、過分な在庫を抱えなくて良いことからロス・フラワーの削減につながっているという。

しかし現状の生花業界の構造においては店舗が仕入れずとも花は生産されてしまう。

そうした中でこれからのフラワー・ロス削減として注目したいのが新しい「冷蔵庫」である。

株式会社エバートロン(総合商研:7850)が開発する水分子コントロールにより生花の寿命を長持ちさせる技術を用いた冷蔵庫を用いれば1か月切り花が持つことになるかもしれない。

フラワー・ロスの額は大きく、また世界的な問題となっている。

こうした中で新しい「冷蔵庫」技術がフラワー・ロスを救うのか。

引き続き注視してまいりたい。

 

グローバル・インテリジェンス・ユニット リサーチャー

佐藤 奈桜 記す